【感想】オードリー若林オススメの本「オレンジアンドタール」を読んで【読書芸人】
藤沢周「オレンジ・アンド・タール」を読みました
この本を読もうと思ったきっかけはオードリーの若林さんがこの本の解説を書いているからです
読書芸人として知られている若林さんですが、この本への思い入れは強いそうで
ぼくにとって『オレンジ・アンド・タール』は単なる小説ではない
と解説に書くほど!
もともとはこの本を読む気はなく、立ち読みで解説だけ読もうと思っていました
ですが、解説には登場人物やこの小説特有の表現を用いて書かれており、若林さんへの愛と知識だけではどうにも理解できません
ということで読んでみた次第です
藤沢周とは
真ん中が藤沢周
1959年生まれの小説家、法政大学教授。法政大学文学部に入学。大学に入学した時には作家になることを決意し小説を書くばかりの日々を過ごす。
編集者を経て、デビューし、1998年『ブエノスアイレス午前零時』で第119回芥川賞受賞する。
作品との向き合い方についてはこのように語っています。
デビュー以来、既成の「文学」という概念を壊すという気持ちで作品に取り組んでいます。大事にしているのは、世界の実相を切り取ること。難しいことですが、その場の「空気」といったものを正確に描き切るのが基本ですね
作品では、少々固いイメージを彷彿をさせるものの、番組「ご本だしときますね」では女子アナについて若林氏に質問攻めにするというお茶目な一面も見せていました
詳しいあらすじ
文庫の裏表紙に書いてある、あらすじです。
高校でアウトロー的存在のカズキは、スケボーに熱中して毎日を送る。今日も伝説のスケートボーダーのトモロウのところへ相談に行く彼の心に影を落としているのは、同級生が学校の屋上から落ちて死んだことだった。そして、目の前で事件は起きた。
自分ってなんなんだよ、なんで生きてるんだよ———青春の悩みを赤裸々に描いた快作。
この本は表題作も「オレンジ・アンド・タール」と「シルバー・ビーンズ」の2作からなっています。「オレンジアンドタール」での主人公はカズキという高校生です
カズキは付属高校での友達の飛び降り自殺を目の当たりにし、不安定な状態に陥っています。そんなカズキが頼りにしているのが、江の島の弁天橋下でホームレス生活をしているトモロウです。
一方「シルバービーンズ」の主人公はトモロウであり、2作の時系列は、ほぼ一緒です
それゆえ、カズキと話しているときに何を考えていたか、トモロウの思想などが後からわかるようになっています。
カズキは伝説のスケーターとしてトモロウを尊敬していますが、そんなトモロウの本当の素顔は県議会議員の息子であり、不始末も金で父が解決するような青年でした
トモロウはそんな家に生まれたことをよくは思っておらず、むしろつまらないと考えています
同時に社会への違和感を抱えています。
家を飛び出して、三田にある大学も中退して、江ノ島の弁天橋下で浮浪者同然の生活をしている自分にイラつくのは毎日のことだが、大学をまともに卒業して県議会議員の親父のコネでどこかに就職しているのも、もっとイラつくことだろう。
このように作中でトモロウは考えています。
トモロウの特徴である江の島の弁天橋下で暮らしている理由は親父への反発心、もっと言えば社会への違和感なのです
そんな風に考えているトモロウを崇拝しているのがカズキです
カズキは友達の自殺から不安定になり、それゆえ、ロールモデルを求め、トモロウを師匠のように扱います。
やはりこの二人最大の共通点は社会への違和感を抱えていること
この違和感こそがこの小説の主題となります
2人とも社会に適応して生きてもつまらないと強く感じているのです
感想
この本のテーマ
読んでみましたが、1周だけだと、書かれているテーマが大きすぎて、自分では消化できていないような気がしました。
2度目を読んでようやく言っていることが掴めてきました。この小説で扱っているテーマは「自分とは」「社会とは」であると解釈しました。
自分とは何か、社会と自分の間にある違和感、世間体、ドロップアウトするのかそれとも社会に順応していくのか。僕の中でそれは高校あたりで終わった、または意識的に考えないようにしていたことでした。
高校のころ、今考えると心に余裕がなくて、わざわざふさぎ込んで考え込んでいました。「自分とは」とか、そういった大きなことを考えている自分を意識しては悦に入っていた節も少しはあったかもしれませんが。
社会全体に違和感を感じて世間体などくだらないと卑下してみたこともありました。世間体を否定すると同時に社会のレールみたいなものに乗ることもくだらないと思いました。くだらないと思いながらも、怖くて何も動かず、そんな自分を下らないと嫌悪したこともありました。
今は心に余裕があるのか、そんなとこ気もあったかなくらいに思っています
そのころに考えていたことを再び思い出すきっかけになりました
社会と自分
社会と迎合したくないという気持ちに共感してしまう自分がいます。
でも、それじゃいけないような気がして、どうにか企業で働くことを無理やり前向きに思ったりして。
多分この感情は学生というドロップアウトするのかしないのかという分岐点の手前にいるからこそのものなんだと思います。
働き始めてすっかり社会と適応し始めたら、ドロップアウトなんて目もくれないだろう。ただの昔あった感情のひとつになってしまう
だからこの社会への反発という感情をどこかにとっておきたいなとも思いました。
ドロップアウトした人への憧れと尊敬
僕が一番尊敬している人種として、小説家、お笑い芸人、バンドマンがいます。
どの人たちもサラリーマンとして生きること以外に夢を持ち挑戦し続けた人。
そういう人たちを僕は無条件で尊敬します。本当にかっこいい
お笑いライブや音楽ライブをみると「この人たちはかっこいい。俺みたいなもんはなんてだせえんだ」と必ず感じます
じゃあさっさとその人たちを目指せばいいだろという方もいると思います。
なんですが、僕は「俺には無理だろう」「多分ドロップアウトしたことを後悔してしまうだろうな」と思うのです
結局のところ、怖いのとそこまでの熱意しか持ち合わせていないということなのでしょう
そんなどっちつかずの中途半端な気持ちだから「どっち側」に行けばいいのかわからないまま、おそらくずっと生きるんだと思いました
最後に
この小説を読んで、ちょっと考えごとをしてしまいましたね
共感し、昔僕が考えていたことの先を言語化してくれるような本でした
いつかこの小説に何も感じなくなる日が来るのかと思うと寂しいような、待ち遠しいような不思議な感じです
- 作者: 藤沢周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/12/09
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それでは!